マイクロマウスの製作の記録を紹介しています

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■16. クラシックサイズマイクロマウス "赤い彗星"の紹介

 S pec


Size

Width:45mm  Length: 76mm  Height: 30mm

Weight

約30.2g

Power Supply
Nano-tech : LiPo (160[mAh] 25-40C) 2cell 7.4V 

Control

速度PI ± (角度P + 角速度PI±FF)

Motors
車輪 Φ6  CL0614-10250-7×2
吸引 Φ7   クワッドコプタ用 不明 (5割で吸引力80g程度 )

Driver

DRV8835×2

CPU
RX62T 96MHz with 256k EEPROM 3.3V
Encoder AS5145B
Gyro MPU6000

Wall Sensors

TPS601A & SFH4550×4

Wheels

POM Diameter:13.2mm  Width:6mm
pinion: CNC加工 自作 M0.3 9枚 真鍮 
spur:   CNC加工 自作 ホイール一体 M0.3 36枚 POM

Maze solve algorithm

往復足立法のようなもの(限定探索)
(最短経路:時間ベース評価関数搭載)

Speed(limit)

Straight:  3.5m/s
Turn:    2.1m/s
Acc:     15.5m/ss

 Introduction

5年ぶりのクラシックでそこそこ成功した新作。紫電改はほぼ完成版に近い機体であったが、近年は同じような変則4輪+吸引の構成の機体が増え、性能差が縮まってきたのでなにか新たな可能性がないかと製作。

電改は今となっては大きく重く、イナーシャが大きいためターン速度に限界が見えていたのでこれを改善すべく、同じ構成でハーフサイズ並みに小型軽量化することでこの欠点を解消することを狙った。その結果、ターンに関しては全ての要素が紫電改よりも向上し、大会成績でもある程度パラメータが煮詰まってきた終盤にはタイムが上回るようになったので、いろいろな問題点もみつかったが狙いはおおむね成功したと言える。

要部品を赤く塗り、ハーフサイズキットのBeeCloneを量産型ザクと仮定すれば訓練された操縦者が乗るものでない限り、3倍以上の速度で走っていると思う。勝負をかけるときは全リミッタを解除する「XX専用モード」というものが存在する。(常時運用はハード故障の危険大)

 Competition Results

大会名 記録 順位
2016 関西地区大会 クラシック競技 :  3秒292 (2位)

2016 東北地区大会

クラシック競技 :  5秒236 1位  
2016 中部地区大会 クラシック競技 :  5秒741 1位
2016 全日本大会 エキスパートクラス
(クラシック)

予選  : 3秒271
決勝  : 4秒739

2位
2位
2017 東北地区大会 クラシック競技 :  4秒615 1位
2017 東日本地区大会 クラシック競技 :  4秒869 1位
2017 中部地区大会 クラシック競技 :  6秒040 1位
2017 全日本大会 エキスパートクラス
(クラシック)
   

予選  : 2秒905
決勝  : 7秒284

2位
1位

 Mecanical design

 
     

地バランスに少し独自の考え方を取り入れた。

このマウスは見た目は普通の変則4輪であるが、図のように先端のパッドと前輪に対して後輪の車軸を0.2mmだけ高くしている。これにより吸引と加減速でタイヤの接地状況を意図的に変化させ状況によって2輪マウスと4輪マウスの特性を切り替えることを狙った。

4輪マウスは直進の加減速の安定性はいいが、どうしてもターン開始時の角速度の応答が2輪と比較して遅れるという欠点がある。そこでぎりぎりまで減速してターンし、前のめりの姿勢になることでターン開始時は後輪の荷重を抜き、初期の応答を早めてやろうというものである。もともと吸引口が前方にあるので等速時も若干2輪の特性になっていることを期待した。

またこの0.2mm差をつけたのは同時に段差対策でもある。クラシック競技のルールでは迷路の継ぎ目は1mmまでの段差が存在することが許容されている。そのためこのマウスのように全長が短く、しかも吸引機構をつけているものは段差があると先端が持ち上げられて、車体最後部が接地して車輪が浮いてしまうというのが弱点になる。


後輪が高いことで機体前方が少し浮きあがった状態となり、1mm程度の段差であれば後輪が浮きあがることはない。

しかし普通の設計の4輪と比較試験をしたわけではないので、この方策が今回本当に成功していたかどうかはわからないが、自分の直感では直進は4輪、ターンは2輪に近い特性に一応はなっていたように思える。ただしシーズン終盤で特定のターンのサーボ遅れが当初より大きくなってしまったので、これはタイヤがすり減ったために結局最後は普通の4輪と同じになってしまったもしれないということ、後輪の接地有無が不安定になり、ターン後の角度合わせの再現性が悪化したのではないかという疑念は残った。




輪やマウントなどは全て自宅CNCと旋盤による切削で製作。自分には機械加工を楽しむという側面もあるが、CNCを毎年オーバーホールして調整しているものの、垂直や芯出しがいまいちなので今後は試作に留めて、納得できなければ図面を書いて外注するべきかもしれない。



 Hardware design

回路図

路は近年のマウスの中では最も単純なほうだと思う。いろいろ厳密にはNGな部分があるが、これでも動くということがわかってもらえれば。

15年ハーフマウスの翠嵐とほぼ同じ構成で、マイコンのピン配置までコンパチである。電源は当初もう少し小さいLDOを予定していたが8.4V→3.3Vが自分のマウスでは初めてで、熱損失の見積もりが甘かったのかしばらくすると保護回路のロックがかかってしまった。(実測すると3.3V系は平均340mA 1.4W程度の損失)
そこで無理矢理、大容量の三端子レギュレータを実装したが効率が悪い上に、その部分で最終的にはんだクラックが多発した。今回電源系統は完全に失敗した。

引ファンの電流をセンシングして変動を解析したり、過電流検知などに使用している。

(尚、念のため書きますがこの回路はアマチュアが適当に設計したもので、安全率やディレーティングなどなにも考慮していないのでもし参考にして不具合が起きたとしても自己責任でお願いします)


 Software design


嵐のソフトがベースになっており、紫電改などと異なりジャイロの性能が向上しているのでのドリフトキャンセル処理などが少ない。

速度センサとエンコーダのカルマンフィルタによるセンサヒュージョンをこの機体で初めて試験的に導入した。その様子はこのあたりを参照。ただ最終的には制御系には遅延が大きくなるので使わなかった。

さをいかして斜め走行も単体のターンだけでなく、例えば45deg +1 45degなどの複合ターンをワンモーション化して角速度の変動を減らすため、コースの真ん中を通らないようなものもある。現在はまだ少ないが、これは今後もパターンが増えていく予定。

 Movie

  

 Future Studies

ハード故障多発

まず、当初翠嵐のモータを使用したが、1週間ほどですぐにロータとコアの接合部が断線してとてもでないと実戦には使用できないことが判明した。そのため現在の少し特性が落ちるモータを使っている。

そして、シーズン終了までに以下のパターンが断線又は剥離した。
・表示LED(1005)
・無理に載せたレギュレータ
・クリスタル(面実装)
・EEPROM(QFN)



ほとんどが吸引のスカートやモータマウントの骨が無い後部に集中していた。
プリント基板厚みは0.4mmでも厳しいと言われているが、クラシックでより激しい動きをする場合は0.6mmでもきついかもしれない。

直進安定性

このマウスが紫電改に劣る部分である。紫電改はほぼ無制御でもまっすぐ直進するが、こいつはよくない。これはメカの精度によるものだと自分は思っている。磁器エンコーダを使っているためあまり精度はよくない上に軸周りのメカが複雑になってしまい、軸ブレがひどい。

あとCL0614はモータ内部の磁器ガードがあまりよくないらしく、翠嵐と同じ厚さの鉄芯でエンコーダ側の磁石を覆っても多少引きあってしまっていた。
(わかってはいたがこのせいで実は全日本決勝のモード選択をミスった)
次、新作を作るならばこれはもう少しなんとかしたい。


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